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音圧が上がらないは理由はミックス?マスタリング? [音圧について]

以前、計10回に渡って音圧に関する記事(以下「音圧記事」)を書きました。あまり実用的な内容ではでなく、面白い記事でもない為(自分で言ってしまうと結構切ない・・・)、ご覧いただいた方は少ないかと思います。

そんなこともあり(?)、今回はその補足と言いますか追記として、私自身の体験談をもとに、ちょっとは役に立つような内容を心がけて記事を書いてみたいと思います。

「音圧上げ ≒ マスタリング」?

さて、音圧に関する話題になったとき、おそらくマスタリングについて語られることが多いと思います。

例えば「音圧 上げ方」というワードでインターネット検索してみると、「マスタリング」という言葉が入った記事が多く見受けられます。

「マスタリング ≠ 音圧上げ」だとは思いますが、少なくとも音圧の調整がマスタリングで行われるのが通例と考えられているようですね。

マスタリング前の音源が聴けない

音楽関係の仕事をしていない私などがプロの音源を耳にするのは、基本的に市販のCDや音源ファイルの購入によるものですので、マスタリング処理が施された状態でしか聴くことができません。

ですので、マスタリング前のミックス段階で、どのような仕上がりになっているのかを確認する手段がありません。

プラグインメーカーの煽り(?)

加えて、プラグインメーカーや販売店は

市販レベルの音圧を実現出来る

といった売り文句で上記のようなマスタリング用のプラグインを販売するため、あたかも音圧が上がらない理由はマスタリングが原因だといった風潮があるように思います。

マスタリングだけが原因?

では、本当にマスタリングだけが音圧が上がらない理由なのでしょうか。私はそうではないと思っています。音圧記事のパート7、パート8で書きましたが、良いミックスがあってこそのマスタリングではないかなぁと思うのです。

マスタリングの段階で、EQをいくつも使用したり、マルチバンドコンプをたすき掛けにしたり、リミッターを何段にも渡って使用しなければいけない状況は、そもそものミックスに問題があると考えたほうが無難なような気がします。

逆の視点で考えると、プロの現場ではミックスとマスタリングは各々専門のエンジニアが担当されることが多いと聞きますが、自分がミックス担当だとして、マスタリングでそんな風に音を変えられたりしたら嫌ですよね。

座学的なテクニック

私自身、まともなミックスができないにもかかわらず、マスタリングだけを勉強したいと思った時期がありました。(今でもまともなミックスができないままですが・・・。)

その結果、音圧記事のパート7で書いているように、

・マルチバンド処理
・パラレルコンプレッション
・多段階リミッティング
・MS処理
・ローレベルコンプレッション

といった処理を学べたことは事実です。

ですが、それで音圧が上げられるようになったかというと、視覚上(RMS値など)は上げられるようになったかもしれませんが、その音圧を上げた音源が良い音質かというと決してそうではありませんでした。

原因を突き詰めると・・・

その後、私は一時期、プロのレコーディングエンジニアの方(以下「先生」)にミックスを指導いただきました。ミックスに関する技術もいろいろと教えていただいたのですが、教えていただいたことの中で今になって一番痛感していることは上記で書いたようなことなんですよね。

つまり、

・マスタリングでどうにもならないときにはミックスに問題があることを疑う。
・ミックスでどうにもならないときは録り音に問題があることを疑う。
・録り音に問題がないのにどうにもならないときにはアレンジに問題があることを疑う。

といった感じです。

これはHIRNESの活動を始めて、より感じるようになりました。MASAが組み立てた楽曲をミックスするとき、音色やアレンジの変更をお願いすることが少なからずあります。

もちろん私のミックススキルが低いことにも起因するので、MASAに対して申し訳ない気持ちがあるのですが、それでも、ミックスの結果によって逆にMASAの方で気付くこともあると言ってくれています。

音色とアレンジに気を配ってみる

私の場合、先生のレッスンで教わった通り、まずはエフェクトを使用せずボリュームとパンだけでバランスを取っていきますが、この段階で良いミックスにできるかどうかがなんとなくわかるようになってきました。(私のスキルも含めての判断です。)

音の相性というか、全体としてうまく馴染むかどうかってことなのですが、ここで無理にEQやコンプをかけて原音を著しく変えてしまったら、そもそも作曲者のイメージから外れてしまうことになるので、その場合には素直に音色の変更をお願いするようにしています。

自分にできる範囲内で一度はミックスを仕上げてみますが、それをMASAが聴いて、無理があると判断してもらえれば、快く変更に応じてくれています。

ですので、私としてはこれだけ充実したマスタリング用プラグインが存在する中、市販の楽曲と同一とはいかなくても近しいところまで音圧を上げられないのは、ミックスの方に原因があるのではないかと考えるようになりました。

ミックススキルの向上に重きを置く

音圧記事のパート9で検証していますが、2003年頃にはJ-POPの楽曲もかなり音圧が高い状態になっています。

私が使用しているプラグインはほぼ「Waves Diamond」のみですので、これを基準に話を進めさせていただくと、「このプラグインがあれば市販レベルの音圧にできる」と言われた「L3 Multimaximizer」が発売されたのが確か2004年か2005年。

つまりそれ以前に発売された市販楽曲(音源)の音圧レベルには、このL3があれば近づけるということになると思います。(過大広告でなければ・・・苦笑)

よって、「Waves Diamond」を使用して、少し無理して2000年代中盤、きれいな音質のままで2000年代前半の音圧にできなければ、私のミックススキルが低いんだと自分に言い聞かせるようにしました。(お金があれば、マスタリング用の新しいプラグインをいろいろ購入したかったですけど・・・。)

プロの音源でも・・・

ちなみに、いろいろな市販CD(音源)を聴いていただくとわかると思いますが、2000年代中盤くらいまでの方が、今よりも音圧を無理に上げている感があった気がします。私が所有しているCDでも音が割れているものがちょくちょくあります。

マスタリング界の巨匠、テッド・ジェンセン氏が手がけた作品でさえ、メタリカのアルバム『デス・マグネティック』などはリマスタリングを要請する署名運動まで行われたようですので・・・。

ワンストップの制作スタイルを生かす

もし私がエンジニアを目指しているのであれば話は別ですが、今の私がミックスするのはHIRNES(自分たち)の楽曲だけです。上述のとおり、ミックスが上手くいかなければ音色を変えることができます。それでもダメならばアレンジを変えることができます。

HIRNESの曲でも、さんざん悩んで、いろいろな処理を試して、それでもダメ、、、という状況が、ベースの音色と少しのフレーズ変更で解決!なんてことがありました。

これは余談ですが、プロの方でも中田ヤスタカ氏やSota Fujimori(藤森崇多)氏など、ワンストップで楽曲制作をされている方がいらっしゃいます。

このように作曲からミックス・マスタリングまで全てご自身だけで完結させてしまうタイプのクリエイターの方の音源は、いわば最終的な音圧も込みで音色選定・アレンジ・ミックスを行われていると思われますので、ジャンル的なこともあるとは思いますが、その他の市販音源に比べても一線を画す音圧レベルになっています。

おそらく(と言いますかほぼ確実に)、どんなに高性能なプラグインやアウトボードを私が使用したとしても、この音圧・音質にすることは一生不可能ではないかというくらいのレベルです。
☟私が所有しているSota Fujimori氏のアルバム『SYNTHESIZED 5』
Sota Fujimori氏のアルバム『SYNTHESIZED 5』

エフェクトの処理方法 < 目指したい音

これも先生のレッスンで教えていただいたことですが、エフェクトの処理方法を勉強するのではなく、まずは各トラックがどのような音になったら良いミックスになるのかを、試行錯誤を繰り返しながら身に付けていく必要がありそうです。

そして、“自分が目指したい音”が定まったところで、その音にするためにはどういったエフェクトの処理が必要なのかを学んでいくという順序の方が、私の経験上では結果的に近道になりました。

あと、「絶対にエフェクトをかけなければいけない」という先入観からも解放されました。元素材が良ければ(=自分の目指す音に一致していれば)、エフェクトをかけなくていいわけですので。

今では、Wavesの「OneKnob Series」のように、つまみを回しただけで音が良くなります的なエフェクトがありますが、とっかかりはそれでもいいのかもしれません。

例えば、それらを使って良いミックスができた時に、各トラックがどのような音になっているのかを確認してみます。そして、(元素材に対し)どのようなエフェクト(EQ、コンプなど)をかけたらその音になるのかを研究していく、というのも一つの手かもしれませんね。

音圧戦争前の音源は・・・

エンジニアさんのホームページなどでお勧めのCDなどが紹介されていると、私はちょくちょく購入することがあるのですが、その時、結構前に発売された作品であれば、なるべくリマスター盤ではなく、オリジナル盤を買うようにしています。(紹介されているエンジニアさんの記事にリマスター盤でもOKと書いてあればリマスター盤を購入します。)

その音源を聴いてみると、確かに音は小さいです。でも、スカスカかと言えば決してそんなことはありません。確かに0dbまでには結構余裕があるのですが、程よいダイナミックレンジと言いますか音が凝縮されている感じがします。

実際にラウドネスメーターで視覚的に見ても、当然0dbまでは余裕があるのでRMSの値は低いのですが、ダイナミックレンジは場所によっては現在のCDと近い値になっています。つまり、それこそL3などのリミッターをかけるだけで、今と同じとは言いませんが、かなりの音圧にすることができます。

音圧を意識しなくても・・・

書籍などで、

マスタリング処理で音圧を上げるので、ミックスしているときは音圧のことは気にせず、結果出来上がった2ミックスがお魚の骨状態の波形でも全く問題ありません。

といった記述がされていることがあります。

私は半分正解、半分不正解だと思います。
まず前半は正解。ミックスの時は音圧のことを気にする必要はないと思います。
問題は後半。不正解ではないのかもしれませんが正解ではない気がします。

もちろん波形を見てどうこう言うのはナンセンスなのですが、私の場合、良いミックスができた時には「お魚の骨」というほどピークがバラバラになっていることはほとんどありません。

音圧記事で書いている通り、現在の私の制作スタイルは、ミックスとマスタリングでセッションを別けていません。よって、マスターのエフェクトを外してバウンスした状態ということになりますが、上手くいっている時にはそれほどピークが飛び出ていないことが多いです。

音の奥深いところ

上述の先生のレッスンで、私が作成したミックスをその場で修正していただきバウンスすると、いらないピークがなくなっていることが多かったです。

興味深いのは、先生の修正でトラックのフェーダーを上げているにもかかわらず、出来上がる2ミックスのピークはなくなるのです。

当時の私は、ピークを見つけるとそこをコンプでつぶしたり、EQでカットしたり、ピークがあるトラックのフェーダーを下げたり、とにかく引き算の処理を試みていました。

もちろん、そういった処理を先生がすることもありますが、オーディオって本当に奥深くて、例えば同じ波形をそのまま二つ鳴らせば音量が倍になりますが、片方を逆相にすると無音になるように(ちょっと例えが悪いですが・・・)、飽和してている帯域を整理して、足りない帯域を埋めてあげる(トラックごとのすみわけをきちんとする)ことで、こんなにも密度の濃いミックスになるんだなぁと実感しました。

【私の考え】音圧を上げるためには・・・

以上のことより、

マスタリングは大切。でもそれ以上にミックスが大切。

が、現時点の私の持論となります。

上述のとおり、私自身、マスタリングに固執した時期が長かったです。書籍もたくさん購入しましたし、実際にマスタリングに関するレッスンを受けたこともあります。

でも、その度に期待した成果を得られずガッカリするといったことを何度も繰り返しました。「マスタリング レッスン」というワードでどれだけ検索したことか・・・苦笑。

今、上記のワードで検索すると「ミックス」という言葉が入った記事が多く表示されます。私が四苦八苦していた当時とは異なり、ミックスの方が重要視されるようになっているのかもしれませんね。

私自身の経験からも、その通りだと思います。私がマスタリングのレッスンをお願いした方々(問い合わせのみの方も含む)も

良いミックスができるようになることを先に考えるべきですよ。

と仰っていました。
なぜ素直にそのアドバイスを聞けなかったのか・・・今となっては悔やまれます。

以上、少しでも参考にしていただける内容があれば幸いです♪

【Written by JUN】


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