ミックスで変化したこと(リファレンスCDの活用) [音圧について]
音圧上げをテーマとした記事のパート8です。
前回、ミックスが変わったことによって音圧上げもそこそこできるようになったと書きましたが、ちょっと視点を変えまして、私の音圧上げ能力は上がったのでしょうか?
答えはNoでないにしても、はっきりYesとは言えません。
以前、サンレコで、レコーディングエンジニアの方がミックスしたデータ(2MIX)を、複数のマスタリングエンジニアがマスタリングをするという企画がありました。
写真左は2009年3月号。スターリング・サウンド(STERLING SOUND)のマスタリングエンジニアの方々の競演が収録されています。
写真右は2012年4月号。メトロポリス(Metropolis)のマスタリングエンジニアの方々の競演が収録されています。
その時の付属DVDには、マスタリング後のデータに加え、元の2MIXも収録されていました。プロのエンジニアがミックスしたデータです。このデータを自分で音圧上げ処理してみたところ、確かにそこそこのレベルまではいくんです。でも、マスタリングエンジニアが処理したそれは一線を画すものでした。
ですので、音圧上げの技術がそれほど向上したとは思えません。ただ、上述の2MIXを音圧上げしたとき、「EQとリミッターだけでこんなにレベルが稼げるんだ」とびっくりした記憶はあります。(特に「Oxford Inflator」と「Oxford Limiter」を使った時は、かなり理想的な音圧に近づきました。)
やっぱりプロのエンジニアがミックスした音源は素晴らしいです。
話しを戻しまして、音圧上げの能力が上がっていないのに、結果として音圧をそこそこ上げられるのはなぜか。それはミックス作業でのトライアンドエラーで得た経験が生きた上での、自分のマスタリングに最適な2MIXができるようになったからだと思います。
市販の書籍等で、ミックス全体をお弁当箱に見立てて、「入るスペースが決まっているのでうまく詰めましょう」といった説明がされていますが、本当にこの通りだと思います。
ただ私は、一部の本で紹介されているような、ベースやキック以外はローカット(ハイパス)する、各トラックごとにマキシマイズして余分なピークを取り除く、といった感じでトラックの処理をルーチン化するようなことはしていません。
同じく、「とりあえずEQ」、「とりあえずコンプ」といったチャンネルストリップ的に全トラックにデフォルトでプラグインを挿すこともありません。
そして、「学ぶ=真似ぶ」と言われるように、自分が理想とする市販CDの音源に近づけることを重視して、ミックスに取り組みました。
もちろん、私が知らない処理がされていれば再現できませんし、そもそも市販CDはマスタリング済みの音源ですので、音量を下げたとしても同じような音質にはなりません。
それでも、聞き分ける力もない自分の耳だけを頼りにミックスしてた時より、リファレンス音源を使用することで、音圧上げの処理に入った際、「なんでこんなに市販CDと違うんだ!」と絶望して、またミックス作業を一からやり直すといったことは激減しました。
加えて、自分が使用する音圧上げソフトの特性もわかってきますので、そのソフトにあわせたミックスができるようになります。
誤解を避けるために書きますが、私の場合、ミックスは最後までマスターにリミッター等のプラグインを挿さずに行います。自分で納得のいくミックスができた段階でそのセッションをコピーし、マスターにリミッター等の音圧上げプラグインを挿したものと別ファイルにしています。
音圧上げの段階で、各トラックのフェーダーやプラグインの値を変更することが多々ありますので、あくまでもミックスとしての完成品は残しておきます。音圧上げでバランスが大きく崩れた際、元に戻れますので。
さて、次回からは分析や音源を使用した実践編(?)を書いていきたいと思います。
【一連の記事へのリンク】
☞ パート1 - 頑なにMIDI
☞ パート2 - 音圧との出会い?
☞ パート3 - 「Loudness war」(音圧戦争)って?
☞ パート4 - 無謀にもハードウェアから
☞ パート5 - いよいよソフトウェア
☞ パート6 - 海苔波形を目指す
☞ パート7 - 結局はミックスなの?
☞ パート8 - ミックスで変化したこと(リファレンスCDの活用) ←本記事
☞ パート9 - 視覚で音圧を測る?(ラウドネスメーター)
☞ パート10 - 【スピーカーで確認】ヘッドホンとの違いは?
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